株の売り時は2冊の名著が教えてくれる
株は買いよりも売りの方が難しい、とはよく言ったもので、売るタイミングによってパフォーマンスが大きく変わります。
株式投資家なら誰しも、株をいつ売ればいいのか迷うものでしょう。
そこで本記事では、以下2冊の名著が推奨する株の売り時を紹介します。
- 株式投資で普通でない利益を得る (フィリップ・リッシャー著)
- 千年投資の公理 (パット・ドーシー著)
株式投資で普通でない利益を得る(以下「普通でない~」)は成長株投資、千年投資の公理(以下「千年投資~」)はバリュー株投資に関して記された本で、世界中の投資家に支持されている名著です。
驚くべきことに、この2冊がそれぞれ紹介する投資手法は異っているにも関わらず、株の売り時に関しては全く同じことが記されていたのです。
書評記事>>>【書評】株式投資で普通でない利益を得る
株を売る3つの理由
「普通でない~」と「千年投資~」に記述されていた株の売り時を要約すると、以下の3点に集約されます。
- 誤った株を買ってしまったと気づいた場合
- 保有する理由が無くなった場合
- より魅力的な投資先が見つかった場合
それぞれ2冊の間に細かい表現の違いもあったのですが、主張していたのは上記の通りでした。
では、一つずつ見ていきます。
1. 誤った株を買ってしまったと気づいた場合
グロース株投資にせよ、バリュー投資にせよ、自分の中では然るべき理由があってその銘柄に手をだしたものの、後になってそれは見込み違いだったと判明した場合です。
このケースでは、相応しくない株を買ってしまったという自分の行動の非を認めることに他ならないので、これが障害となって売却に踏み切ることが難しいと名著は指摘しています。
自分の誤りを認めることは精神的に辛いことですが、誤った銘柄を持ち続ける理由は無いのでさっさと売却して次に進むべし、としています。
2. 保有する理由が無くなった場合
「普通でない~」の成長株と、「千年投資~」のワイド・モートを持つ割安株、然るべき理由があって買った素晴らしい銘柄も、永遠にその理由が持続するとは限りません。
経年により、成長が衰えたり堀が無くなったりする可能性は十分にあります。
買った時点では十分に兼ね備えていた魅力が、時の流れによって無くなったと認められた場合は売却すべし、としています。
株は買って終わりではなく、持続的に保有銘柄の状況を観察する必要があると指摘しています。
3. より魅力的な投資先が見つかった場合
株式投資とは相対的なもので、今持っている銘柄よりも素晴らしいと思える銘柄が見つかることは多々あることでしょう。
その場合、売却時の税金を支払っても乗り換える価値があり、新しい投資先は既存の投資先よりも遥かに高い上昇が見込めると判断出来た場合のみ、株を売って良いとしています。
ただし、頻繁に乗り換えることは推奨しておらず、あくまでも自分の中で強い根拠がある場合のみ、税金を支払ってでも投資先を変更する価値があるだろうとしています。
意見が分かれた第4の売却理由
ここまでは「普通でない~」と「千年投資~」も共通の意見です。
実は面白いことに、「千年投資~」には第4の売却理由があって、それが「普通でない~」では否定されているのです。
第4の売却理由とは、
- ポートフォリオでの保有率が大きくなり過ぎた場合
です。
例えばA~Eの5銘柄に分散投資していて、それぞれ20%のポートフォリオを初期に築いたとして、銘柄Aが急上昇してポートフォリオのうちの40%にまで到達した場合です。
「千年投資~」では一つの銘柄で自分のポートフォリオの浮き沈みを大きく左右するリスクを避けるため、A銘柄のようなを売るのは理に適っているとしています。
しかし「普通でない~」の場合では、そうした場合でも魅力的である限りは持ち続けるべし、としています。
そもそも「普通でない~」の投資手法は最高の銘柄のみを集めた少数精鋭のポートフォリオなので、大きな利益を得たいのであれば自信がある限りはホールドし続けるべきだと主張しています。
このように、まるで示し合わせたように売却理由が同じだったのが、最後で意見が分かれるのも面白いところです。
まとめ
2冊の名著、「普通でない~」と「千年投資~」が示唆する株の売り時は3点あります。
(「千年投資~」は4点)
- 誤った株を買ってしまったと気づいた場合
- 保有する理由が無くなった場合
- より魅力的な投資先が見つかった場合
- ポートフォリオでの保有率が大きくなり過ぎた場合 ※「千年投資~」のみ
もし株の売り時に迷った場合、「普通でない~」「千年投資~」という名著達の主張に耳を傾けてみると良いでしょう。
「普通でない~」「千年投資~」は株の売り時以外にも、株の買い時や銘柄選択に関しても有益な情報が記載されているので、おすすめです。