【書評】日本再興戦略
今日は久しぶりに書籍紹介の日とします。
紹介するのは落合陽一さんの「日本再興戦略」です。
この方は昨年秋に放送した情熱大陸で知り、「現代の魔法使い」と紹介されていまして、中々面白い人物だと妙に記憶に残っています。
同番組内で最も印象に残っていたのが、睡眠時間を削ってドラクエ10をプレイして結局寝落ちした場面でした。
ドラクエ好きに悪い者はいない、ということで、ここ最近売れている本であることも手伝って手に取ってみました。
書籍情報
書名:日本再興戦略
著者:落合 陽一
出版社:幻冬舎
発売日:2018/1/31
ページ数:254
士農工商の見方が面白い
本書ではまず「欧米とは何か」「日本とは何か」を踏まえた上で、ではどのようなテクノロジーが将来席巻するか予測し、その上で日本はどうあるべきか政治・教育・仕事・生活といった個別テーマに切り込んでいくスタンスをとっています。
一から十まで全て賛同できるわけではありませんが、落合氏の尖った意見を存分に堪能でき興味深く読み進めることができました。
中でも最も印象的なのが、日本人は士農工商がもともと向いていたという意見。士農工商とはご存じインドのカースト制度のような江戸時代の身分制度で、小学校の歴史の教科書に出てくる言葉です。
その下に「えた、ひにん」というさらに酷い身分があり、そのことも手伝い士農工商が肯定的にとらえられる意見はあまりみかけません。
にもかかわらず、落合氏は士農工商は本質的に日本向けで非常に良くできてい、これからの時代にも向いていると極めて高く評価しています。
「士」は政治家・官僚、「農」は百姓、「工」は職人、「商」は商人・金融業で、価値を何も生み出さぬ「商」が序列が最も低いはずなのに、現代は金融業や証券業が持ち上げられすぎていると指摘しています。
「農」の百姓は「百の生業」という意味で、これからの時代は一つの物事を究めるのではなく、複数の物事を並行でこなす時代になっていくはず、だから「士農工商」は理に適っている制度だと意見しています。
何と面白い見方をする人でしょうか。
確かに現代では金融業のような「商」は高給取りとなっています。
しかしこれからの時代、そうした仕事がAIに取って代わられるようになったら、「商」の需要は一気に無くなるかもしれません。事実、現在もメガバンクは早期退職者を募集しています。
この士農工商に関する考え方、確かに理に適っていて筋が通っている気がします。
“大キルト”って何よ、”大キルト”って!?
これは誤字でしょうか。
214ページに”大キルト”なる単語が登場します。
MBAのスキルはすでにある価値を増幅するエンハンサーにはなるのですが、本質的な価値を創る人になることは少ないです。つまり、専門性を持っている人がMBAに行くのはいいですが、専門性がない状態で行っても、誰かと組まない限りエンハンスすることはできないのです。つまり、大キルトしかかえられないドラクエみたいなものです。
216ページより引用
だ、大キルト?ちょっと文章の意味が分かりませんでした・・・。
バイキルトの誤字ですよね!?
株屋がティッカーシンボルを間違うことが有り得ないように、ドラクエファンがバイキルトを大キルトなどと間違うなんて120%有り得ない!!
落合氏か編集かは分かりませんが、これはちょっといかがなものか。ちゃんと校正してなかったんでしょうかね。
もっとも、バイキルトとして読んでも文章の意味が今一分かりませんでした(笑)
落合陽一氏の世界が楽しめる
本書では多様なテーマを扱っていますが、上記の”大キルト”のようにマニアにしたら絶対に間違いようの無い間違い・認識違い、そして底の浅さがあるのかもしれません。
まあ、それを差し引いても「士農工商」のように落合氏独特の尖った意見を楽しめたので、本書を読んで良かったと思います。