【書評】株式投資で普通でない利益を得る
今日は書評の日とします。
紹介する本は「株式投資で普通でない利益を得る」です。
この本はフィリップ・フィッシャーという人物が1950年代に書いた本で、様々な投資家に多大な影響をおよぼし、あのウォーレン・バフェット氏も影響を受けた一人とのことです。
投資本では古典に相当するということで、このたび読書にチャレンジしてみることにしました。
書籍情報
書名:株式投資で普通でない利益を得る
著者:フィリップ・A・フィッシャー (著)
出版社:パンローリング株式会社
発売日:2016/7/16
ページ数:274
株について調べるべき15のポイント
本書で最も評価が高いのが、「株について調べるべき15のポイント」です。
周辺情報を利用して、これらの15のポイント全てにあてはまる企業、ないし大部分が該当する企業は投資に値するというのです。
以下、15のポイントを羅列します。
- その会社の製品やサービスには十分な市場があり、売上の大きな伸びが数年以上にわたって期待できるか
- その会社の経営陣は現在魅力のある製品ラインの成長性が衰えても、引き続き製品開発や製造過程改善を行って、可能な限り売り上げを増やしていく決意を持っているか
- その会社は規模と比較して効率的な研究開発を行っているか
- その会社には平均以上の販売体制があるか
- その会社は高い利益率を得ているか
- その会社は利益率を維持し、向上させるために何をしているか
- その会社の労使関係は良好か
- その会社は幹部との良い関係を築いているか
- その会社は経営を担う人材を育てているか
- その会社はコスト分析と会計管理をきちんと行っているか
- その会社には同業他社よりも優れている可能性を示唆する業界特有の要素があるか
- その会社は長期的な利益を見据えているか
- 近い将来、その会社が成長するために株式発行による資金調達をした場合、株主の利益が希薄化されないか
- その会社の経営陣は好調な時は投資家に会社の状況を饒舌に語るのに、問題が起こったり期待が外れたりすると無口になっていないか
- その会社の経営陣は本当に誠実か
中には「経営を担う人材を育てているか」など、外からでは中々見えない項目もありますね。
フィッシャーは実際にその会社の人と会って話をしたり、ライバル会社や出入りしている業者から情報を聞き出す、「周辺情報利用法」を提唱しています。
一介の個人投資家には中々難しいかもしれませんが、サラリーマンであったら自分の所属している業界ならそういった情報が取得できる可能性があります。
まえがきが長い!
この本の大きな特徴は、まえがきが物凄く長いことにあります。
このまえがきはフィリップ氏の息子さんのケネス氏によるもので、父親であるフィリップ氏の人となりを振り返った内容となっています。
これが長い!
274ページ中、まえがきだけでなんと前半の73ページも費やしています。
いつまで続くのかとしびれをきらし、ケネス氏のまえがきは一番最後にまわし、本文から読んでしまいました。
フィリップ氏の本文を読んでからまえがきを読むことによって、よりフィリップ氏に親しみ(?)が持てました。
エピソードのひとつを紹介すると、フィリップ氏は議員の名前を全て覚えるのが趣味で、”ハワード・バフェット”という議員がいたからか、ウォーレン・バフェットに向かって何度も”ハワード”と呼びかけてしまっていた、というのです。
このように人間味のあるエピソードが掲載されており、まえがきも中々面白いです。
現代にも通じる
本書は多くの投資家から支持を集めているだけあって、世代を超えても通用する内容となっています。
ファンダメンタル分析を主に採用している投資家は一読の価値ありです。
やや難しめの内容なので、何度も繰り返して読んで理解を深めていきたいです。
余談ですが、1950年代に刊行された書物ということもあり、本書はIBMを褒めています。
様々な投資本でけなされているIBMが褒められているという点でも、本書は新鮮な気分で読むことができました。