【書評】株式投資の未来~永続する会社が本当の利益をもたらす
今日は書評の日とします。
紹介する本は「株式投資の未来~永続する会社が本当の利益をもたらす」です。
途中経過まで読んだ段階でも絶賛しましたが、先日ようやく全て読み終えたので、書籍紹介カテゴリの記事を改めて書くこととします。
素晴らしい書籍の書評なので、下手なことは書けないといささか緊張します。
書籍情報
書名:株式投資の未来~永続する会社が本当の利益をもたらす
著者:ジェレミー・シーゲル (著), 瑞穂 のりこ (著)
出版社:日経BP社
発売日:2005/11/23
ページ数:345
成長の罠
本書は大きく分けて、3つのテーマがあると理解しました。
- 高成長企業≠高リターン
- 配当再投資の有用性
- これからの高齢化社会における株式投資
そのうちの最初のひとつ「1.高成長企業≠高リターン」は本書の最初に議論されており、まず実例として、低成長であるエネルギー会社「スタンダード・オイル(現エクソン・モービル)」と飛ぶ鳥を落とす勢いで急成長した「IBM」の、1950年から2003年までの総リターンを比較する所から始まります。
1950年から今日までの情報技術の進歩は目覚ましく、普通に考えれば成長産業を代表するIBMの方が優れていると予想するところですが、実際はオールドエコノミー企業であるスタンダード・オイル社の方がリターンが上回る結果であったと示しています。
投資家は、急成長する企業に投資することで優れたリターンを得ることができると思うものですが、実はそうではなく、急成長企業は個人投資家に富をもたらすとは限らないと本書は説いています。これを本書では、成長の罠と表現しています。
急成長企業は投資家からの期待値も高いので株価も高騰しやすいのですが、成長には限度があり、また期待通りの成長をするとも限らないので、結果、リターンはそれほど大きいものにはならないと説明しています。
非常に論理的で納得のいく説明でした。
思い当たる節があります。
今日の日本市場では、マザーズ市場のバイオ関連やら人口知能関連やらの有象無象の銘柄が高騰と急落を繰り返していますが、こういった銘柄達に踊らされると、正に「成長の罠」に陥れられてしまうということでしょう。
アメリカだけでなく、日本、いや全世界の株式市場に通じる話と思います。
配当金は企業の信頼の証
私の米国株の銘柄選択に大いに影響を受けている書籍に「バフェットの銘柄選択術」があります。
この書籍では、以下のようなことが書かれていました。
- 配当金を出した時点で課税されてしまう。利益は配当ではなく内部留保することで、投資家は課税されることなく株価上昇という形でより多くのリターンが得られる。
これに納得をして、ある程度配当はあった方が望ましいけれどそれほど多く無くても仕方がないと、あまり配当の無い、その代り抜群の知名度のあるDIS(ウォルト・ディズニー)を買ったのでした。
「株式投資の未来~」では、配当再投資で株数を積み上げていく投資戦略こそ、長期的に富を得る道筋であると主張しています。
なぜここまで配当を重視するのか?内部留保じゃいかんのか?
それは、配当金というものが、利益をきちんと株主に還元する証拠品であるから、としています。
企業が生み出した利益は、内部留保に使われたとして、具体的に何に使われたのか外部からは知りえません。
経営者や役員の私腹を肥やすために使われたのかもしれません。
内部留保で(投資家の目から)消えるより、配当金という分かりやすい形で投資家に還元することで、その企業はズルをしない信頼に足る企業だというわけです。
ううむ、その発想は無かった!
配当金が企業としての信頼だとは、一度も考えたことはありませんでした。
でも、言われてみればたしかにその通りです。
無配の新興企業とか、利益を一体何に使っているのやら・・・。
個人投資家をカネづるとしか考えていない、けしからん企業も確かにあるのでしょうね。
読んで損なし、いや、読むべし!
上述のように、本書は素晴らしい知識を授けてくれます。
2005年刊行なので10年以上前の書籍ですが、色あせると感じることは皆無です。
株式投資以外の知識も、教養として学べます。
例えば、古代の高度な文明が衰退したのは、世代間で伝承する技術が無かったからで、効率的に後世に記録を残せる印刷機が出現した1500年以降から、急速に人類は進歩した、とか。
株には関係ないのですが、上記のようなことも書いてありました。
本書は全ての投資家におすすめできる、本当に素晴らしい作品です。
素晴らしい以外妥当な表現がありません。
もしあなたが未読であれば、ぜひとも身銭を切って読んでみることを強くお勧めします。
書籍代以上の価値は必ずあります。